彷徨する旅のアーカイブ

旅先や日常で出会った「非日常」の記録。フィルムとデジタルで撮影します。

奥深き絵馬の世界 vol.3 〜縁切地蔵編〜

お地蔵様の縁日。吉塚地蔵尊、旭地蔵尊と巡って参りましたが、最後に訪れたのは「縁切」にご利益のあるお地蔵様です。

そのお堂があるのは早良区の野芥。崇福寺から地下鉄とバスを乗り継ぎ約1時間ほどかけてやっとたどり着きました。

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なんの変哲もない住宅地の一角にひっそりとあるそのお堂に足を踏み入れると、一種異様な空間が広がっていました。背を向け合いながらうつむく男女の絵馬と、縁切地蔵への願いが込められた封書が壁一面に貼られており、そのどこか強迫観念めいた光景に息を呑みます。

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看板に由来が書かれていました。

野芥縁切地蔵尊由来

和銅(西暦708〜724年)の頃重留の里(現在早良区重留)に住んで土生の長者と呼ばれた富永修理太夫照兼の子兼縄が粕屋の長者原(現在粕屋町)の大城長者曽根で出羽守国貞の娘(お古能姫)と縁組みが成立し輿入れの日、兼縄がある事情の為出奔したので照兼は、これを頓死と偽って使者を大城長者に急報の途中、お古能姫はこの報せを野芥で聞き「早や嫁ぐべき家も無し」とこの土地で自刃して果てた。土地の人々が哀れんで菩提をとむらうために一体の石蔵を建てたのが野芥の縁切地蔵尊といわれている。

其の後男女の縁切にあらたかとして、昔より全国各地から信者が祈願しにきましたが最近は一切の悪縁諸病と縁切りという事で霊験あらたかであると有名になり、北は北海道 南は沖縄まで参詣者が多い。(略)

野芥縁切地蔵尊史跡保存会

由来に書かれるように病気との縁切りを祈願している人もいましたが、やはりそのほとんどは人と人との縁切り祈願が多いように見受けられます。

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これまで見てきた同じ小絵馬師のどこか可愛らしくてほっこりする絵馬とはまったく違うおどろおどろしさが…。二人ともニヤリと笑っていたり、どちらか片方だけが笑っていたり、はたまた怒っていたりなど、それぞれ表情が異なっているので絵馬によって受ける印象がまったく違います。さらに、女性と男性の身長差がありすぎるものや、バランスが右に偏りすぎているもの、線がゆらゆらと不安定なものもあったりして、そのアンバランスさがより不気味さを醸し出しています。

f:id:salomery:20210428212010j:plainこちらの絵柄が一番強烈でした。男性のちょっとした化け物感…

無人のお堂には、絵馬を扱っている場所の地図と、使用前の古い絵馬が見本として貼られていました。

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この絵馬の絵が一番いい!!とてもいい!!!

これがオリジナルの絵柄だとすると、今の絵馬はどんどん崩れていってるような?これを描いたのはお父さんのタカノさん?それとも娘さんの初期の頃なのかな?うーん、気になる…。そのあたりも聞くことができるかしら…と、早速絵馬を扱っているという「サイクルショップ友」へと向かいます。

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え?自転車屋さんに絵馬があるの…??

店先には自転車の修理をしているおじさんがいました。おそるおそる聞いてみるとやはりここで間違いないもよう。自転車修理の少年を待たせていたので申し訳ないと思いつつ、ここでも絵柄を選ばせてほしいとお願いしてみるも「ぜんぶ同じ」と言われ悲しみ…(ちがう!ちがうんだよ…!!)。そこをなんとか粘って4枚だけ出してもらいました。無理言ってごめんよおじさん!ごめんよ少年!!

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急いで絵馬を選んで写真を撮らせてもらうと、「午前中も写真撮ってたでしょ?」とおじさん。どうやら午前中にもわたしのような人が縁切地蔵にいたらしい。そういえば先ほどお堂から帰る時に、来た時は空だった小さな駐車スペースに車が1台止まっていたような。わたしがいなくなるのを待っていたのかな…?つまりそれだけ人が訪れるってこと?こんな小さなお堂に…??にわかには信じられません…。

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ちなみにこちらの絵馬は吉塚地蔵や旭地蔵と違ってセルフサービス。壁にかけれるように紐はくくりつけてくれますが、書くのも掲示するのも自分でやります。だからこそ縁を切りたい人と思われる個人情報まるだしな履歴書や、切り取られた写真が壁に貼られたりもしており、人間の恐ろしさを感じるのでありました。

吉塚地蔵からノンストップで駆け抜けたので、すぐ近くのカフェでちょっと休憩。シャレオツなスイーツをいただきます。

f:id:salomery:20210428230807j:image小さなカフェのYUKICAFE。縁切地蔵とシャレオツスイーツとのギャップよ…

休憩後は、まだ撮りたりなかったので再び縁切地蔵へ。気のすむまで写真を撮って帰ろうとすると、また車が一台止まってわたしが帰るのを待っているのした…。

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わたしは幸運にも今まで人と縁を切りたいと思うような状況に陥ったこともなく、今も縁を切りたいと強く思うような人はおりませんので、もちろん縁切の絵馬もお持ち帰り。サイクルショップ友さんでは他にお客さんがいたので、聞きたいことがまったく聞けず不完全燃焼な訪問となりました。また本気で縁切りたい人や出来事があった時に改めて訪れてみようと思います。んー、でもやっぱりそんな日は一生こない方がいいかな!!

では、最後に「縁結」と「縁切」の絵馬の写真を載せて終わりにしようと思います。くっついたり、離れたり、人間とはめんどくさい生き物ですねぇ…

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奥深き絵馬の世界 vol.4 〜志賀島編〜につづく▶︎▶︎▶︎