今回のテーマのひとつは「再訪の旅」。前回はローカルな弘南鉄道に乗って訪れましたが今回はバス。雪に埋もれた街を眺めながら思い出の地へと走ります。
CONTENTS
- 思い出の地、黒石へ
- 黒石ダンジョン
- 困った時の「スーパーこまい」
- 遭難したピンクのベレー帽
- 思ひ出の温湯温泉郷
- 可愛い赤白の鏡餅
- 後藤温泉客舎に泊まる
- 鶴の名湯 温湯温泉
- 最高の夕食
- 温湯温泉の朝
- 後藤温泉客舎の朝ごはん
- あっという間に雪だるま!?温湯温泉を散策
- 後藤焼きそば店
- 温湯温泉と林檎の思い出
- まだまだ続くよ、雪の散策
思い出の地、黒石へ
東北旅の終着地に選んだのは、青森県黒石市。弘前から約1時間ほどかけて終点の黒石駅へ。降り立った瞬間、「あぁ、懐かしい・・・」という感情はちっともわきません!なぜなら前回の旅で訪れた時とはまったく違う光景が目の前に広がっていたから・・・。
黒石ダンジョン
本日のお宿は同じ黒石市ではあるものの、ここからさらにバスに乗って移動しなければなりません。その前に夕ごはんを調達せねば・・・!そう、重いキャリーケースを引きずりながらこの雪道を歩くという苦行が再び待っているのだ!!(今回の旅で雪旅にはキャリーケースNGということを痛いほど学びましたね)。
ご当地スーパーに照準を合わせいざ出発するも不測の事態。なんと!駅前が攻略激ムズな雪壁ダンジョンと化していたのである・・・!!本来ある道がなかったりするから道案内アプリもぜんぜん役に立ちません。最終的に公衆トイレに案内されて行き止まりに・・・(ちょっと笑った。正直ずっとトイレ我慢してたから助かった!)。
こんな時はUターンして同じ場所からスタートするのが一番。しかしすべるすべる!!一瞬克服したと思ったのは勘違いで、この積雪量だと普通にすべるという気付きましたね・・・。
再び黒石駅からスタートし、別ルートでなんとかダンジョンを脱出。ようやく普通の道に出ることができました・・・。(普通?普通って何??というような雪ですが・・・)
重い荷物を引きずりながら、雪の降り続く黒石の街を歩く、歩く・・・。すべる、すべる・・・。もう、いろんな意味で限界だ・・・・・。
困った時の「スーパーこまい」
当初の計画では弘前市内のスーパーでご当地食材を調達。早めにお宿にインして夜ごはんを自分で作る予定でした(自炊可のお宿)。今はもうそんな時間も気力はありません。ただただラクして美味しいものを食べたい・・・。
そんな時はスーパーこまいの出番だよ!!疲れて何にもしたくない時にここに行けばなんとかなるから、地元の人たちの間では“困ったときの「こまい」”と言われいるらしい。
身も心もボロボロになりながらやっとのことで到着。もう半泣き状態です。駅から歩いて15分のはずが30分かかったね・・・。夕食の用意を始めるにはちょっと遅い気がする微妙な時間帯。果たしてわたしが求めている食べ物はあるだろうか・・・。ドキドキしながら中に入ります。
寿司だ寿司だ!!!
わたしは寿司が食べたかったんだーーーーー!!!
こちらのスーパーこまいさん、お寿司が有名で土曜日には100円になるという噂・・・!(弘前のバス待ちしていた少年から聞いた)何だその神サービスDAYは・・・!!残念ながら今日は金曜日であやかれなかったけどそれでもじゅうぶん安い。無事にお寿司を調達できてルンルンです。
遭難したピンクのベレー帽
そして今日、最後に乗り込むバスがやってきました。無事バスに乗り込み安堵したところで重大なことに気付きます・・・。
ベレー帽!ベレー帽がない・・・!!!
もう何年も愛用していためちゃくちゃお気に入りのピンクのベレー帽が行方不明に・・・。どうやらすべり散らかしたどこかの時点で落としてしまったらしい(号泣)
「バラ色の帽子」というブランドのもので、リスの形をしたもこもこがついてて可愛いのよ。何が一番ショックって!北海道のアイヌコタンでお持ち帰りしたこれまたお気に入りのブローチをつけていたからなの・・・!!
デザインは一緒でも手彫りだからひとつひとつ表情が違うし、裏面には名前も彫ってもらった世界にひとつしかないわたしだけのブローチ。友人たちにも名前を刻んでお土産にあげたものだったから本当に悲しくて悲しくて・・・。


春になり雪解けとともにわたしのベレー帽も姿を現さないかな・・・(実際にそういうことがあるらしい)。そんな淡い期待を抱いています。黒石駅からスーパーこまいに向かう間あたりで拾った方はわたしにご連絡くださいませ!お願いいたします!!
そのための長々とした思い出語りでした。というわけで本編に戻ります・・・っ。
思ひ出の温湯温泉郷
朝5時に秋田県大館から始まった大移動。日本海側を通るJR五能線で青森県深浦まで向かい、代行バスに乗って五所川原を経由し弘前へ。さらにそこからバスを乗り継ぎ最後の最後にたどり着いたのは、少ない街頭の光と真っ白な雪で闇にぼんやり浮かび上がる温湯(ぬるゆ)温泉郷・・・。
地元の人じゃないと位置関係がわかりにくいので、さろめり画伯がここぞとばかりに描いてみたぞ▼▼▼
(青森県)深浦→弘前→黒石→温湯温泉NOW!!!
長い、長い一日がついに終わろうとしています・・・。
可愛い赤白の鏡餅
今日泊まる宿に向かう前に、ちょっとした食品や飲み物が揃う土岐商店さんに寄り道。スーパーでは目的の夕ご飯を調達できたけど、いい感じのお酒がなくてちょっと物足りなかったのです。
店の奥からおばあちゃんが出てきました。小さいサイズの地酒を一緒にさがしてもらうもどうやら売れてしまったらしい。しぶとく探していると手乗りサイズの梅酒発見。まったくご当地色はないけれど仕方がない。お会計をしてもらおうとレジに向かうと・・・
めちゃんこ可愛い鏡餅が目に飛び込んできたのである。お餅の上に乗っかってるのは蜜柑じゃなくてちんまい姫林檎。さすが青森県!
可愛い、可愛いと喜んでいたら、なんとおばあちゃん、「持っていく?」と言って鏡餅の林檎とさらに裏からも持ってきて手渡してくれました。うれしい〜!!!疲れ切った一日の終わりに思いもよらぬ可愛い贈り物。じんわり心が温まりました。
後藤温泉客舎に泊まる
ほくほくにこにこしながら商店のすぐ斜め前にある本日のお宿、「後藤温泉客舎」さんへ。前回の旅から約2年と半年。念願叶ってついに・・・!この豪雪でどうなることかと思ったけれど、無事にたどり着いたよーーーー!!!!!(涙目)
温湯温泉と客舎
「客舎(かくしゃ)」とは、基本的に温泉施設(内湯)をもたない宿泊施設のこと。今でこそ観光地として賑わう温泉地ですが、かつての日本では温泉に入って療養(湯治)することが日常的に行われていました。湯治にきた人々は客舎に泊まり自炊しながら、共同温泉(外湯)に通ったのです。
その湯治場の雰囲気を色濃く残すのがここ、古湯温泉。江戸時代から庶民の湯治場として津軽の農家や漁師に愛されてきた温湯温泉には、近代以降も共同浴場を中心に客舎が取り囲み、大変賑わっていたそうです。八百屋や魚屋、呉服店、美容室、土産物店などなど湯治客向けの店が立ち並び、「まるで銀座のよう」と言われるほどだったとか。
現在でも、建て替えらた共同浴場「鶴の名湯」を中心に4軒の宿泊施設がありますが、当時のままの湯治スタイルで営業を続けているのは今回宿泊する後藤客舎のみ。なんと江戸〜明治時代の建物というから驚きです!
前回宿泊した飯塚旅館さんも、はじまりは「飯塚客舎」だったそう。こちらも大正時代の建築でとっても素敵な外観で大好き!他にも鶴の名湯周辺には大正、昭和初期頃の建物と思われる元客舎の建物が残っており、そのハイカラな佇まいに往時の温泉地の賑わいを感じることができます(紹介はまた後ほど・・・)。
2022年GWの旅の様子はこちらからどうぞ▼▼▼
ガラガラガラ・・・。中に入ると目の前にまっすぐ伸びる印象的な通路。
通路の壁に取り付けられた電話から女将さんに到着したことを伝えると、奥の扉の先にあるお住まいからとことこやってきました。部屋に案内されて建物内の説明をあれこれ受けてあとは自由気ままにひとりの時間。もう大の字になって寝転がりたい気分・・・!!
でもでものんびりするのはもう少し後。まずは薄暗い客舎内をちょっとだけ散策してみることに。室内は暖房が効いてあったかいけれど、部屋の外は凍りつくような寒さです。
まずは炊事場へと向かってみます。宿泊客はここを使って好きに料理することもできます。
さっき女将さんから水は「元栓」を捻って出すようにとの説明を受けたのですが、元栓がどれなのかちっとも分からず・・・。途方にくれているとちょうど炊事場にやってきた宿泊客のおじさまに教えてもらってやっと理解。部屋の端っこにあるこちらの蛇口を捻って水、もしくは温泉を出すようにとのことでした。助かったー。
どうやらこの日の宿泊はわたしたち二人だけのよう。おじさまは東京から来ていて、毎年正月はここで過ごすと決めているらしい。かれこれ10年くらい通っているのだとか。すごい!奥様も一緒の時もあれば、予定があわなければ今回のように一人でやってくるらしい。相当好きなんだなぁ。
そして、炊事場の正反対の突き当たりがトイレ。寒いし暗いしちょっと怖かったな・・・。



客舎内の散策もほどほどにして、夜の温湯温泉を散策だーーー!!!(なんだ、まだ元気じゃないか)
お久しぶりの飯塚旅館さんの特大こけし提灯にもご挨拶。
こちらはわたしが大好きな元客舎の建物です。
後藤温泉客舎の横にある坂道にもグッとくる。
鶴の名湯 温湯温泉
あたりををぐるーっと一周して満足!キンキンに冷えた後は、温泉であったまりましょう。後藤温泉客舎では、目の前にある共同温泉に無料で入れるチケットがもらえるのだ!(ちなみに小さいタオルやシャンプーなどは別料金)
こけしが展示されていた!かわいいー!!
温泉は熱いお湯が苦手なわたしにも熱すぎずぬるすぎずなお湯でちょうどよかった〜。湯上がりにはこれっきゃない!というわけで瓶のコーヒー牛乳を自販機で買いました(そして飲まずに持って帰って福岡で飲みましたね・・・)。
最高の夕食
すでに時間は20時過ぎ。夕ご飯を食べ始めるにはちょっぴり遅い時間になっていました。つい遊んでしまうからいけません。
お待ちかねのご飯だよ!本日の献立は、スーパーこまいの「特上ちらし寿司」と「たい寿司」、「もやし炒め」です・・・!!
最高じゃないか・・・!!!
ご当地スーパー大好きっ子としてはなかなか最高の夕ご飯。「もやし炒め」は大鰐温泉の名物「大鰐温泉もやし」を食べれなかったことが悔しすぎてつい買ってしまったものですね・・・(ちなみに使われているのは大鰐温泉もやしではない)。
美味しいしお腹いっぱいで大満足だ!!!温泉客舎らしく自炊したいところだったけれど、それはまたの機会にとっておくとしましょう。
さぁて、眠ろう。そう思って布団を敷くと、お・・・重い・・・!!!!!掛け布団がわたしの人生史上一番重い!!「重い布団好き」と自負してたけど、そんなわたしでも重すぎて寝返り打てないレベル。ちょっと笑っちゃうくらい重かったので、全部がそうかはわからないけど冬の後藤温泉客舎に泊まる予定のある方は、ぜひ掛け布団の重さに注目してみてください(今までにない注目ポイント)。
温湯温泉の朝
三が日が終わり、お正月が終わってしまう・・・そんな寂しさを少しずつ感じ始める1月4日の朝。旅のラストデイです。
昨晩暗くてよく見えなかったものたちが存在を訴えかけてきます。
後藤温泉客舎の朝ごはん
7時半過ぎ、女将さんが朝ごはんを運んできてくれました。後藤温泉客舎さんでは予約時にお願いすると朝食をつけることができるのです。ありがたい〜。
絶え間なく振り続ける雪の中、共同温泉に通う人たちの姿を障子のガラス窓から眺めながら、最高の朝食いただきます。
あっという間に雪だるま!?温湯温泉を散策
朝食を食べ終えた後は、女将さんに連絡して先にお支払いをすませます。どうやらチェックアウト時間はいつでもいいっぽい・・・?とりあえず11時過ぎのバスに乗るからそれまでということにしてもらいます。
あとは時間の許す限り温湯温泉を散策だ・・・!!
土岐商店さんの建物も実はめちゃくちゃかっこいいのだ!!!
建物のあちこちに「土岐客舎」の文字。
もしかしてもしかしなくても土岐商店さんも元は客舎だったの??昨晩おばあちゃんに聞いてみたかったなぁー。
ていうか、みーんな!みんな雪かきしてる!!!
まずはバス乗り場の確認をしなければ・・・。乗り遅れたら大変だもの!雪かきしているおばさまに教えてもらったついでに世間話。どうやらおばさまはここに住んでいるわけではなく、弘前市から通勤で通っているらしい。この雪の中お疲れ様です。旅行で来ていて今は散歩中と伝えると、「雪だるまにならないようにね!」と送り出してくれました。なんだかその言い方がとっても可愛いくてにんまり。雪だるまにならないように、気をつけて行ってきます・・・!!!
後藤焼きそば店
ゴールは温湯温泉入口にあるゲート。温湯温泉の文字と温泉マークにもこんもり雪が積もっています。
ゲート横の建物は看板はないけれど「後藤焼きそば店」さん。さっき朝食をたっぷり食べたばかりなのに、もし営業してたら絶対に食べてやろうと目論んでいました。そう、わたしは強欲。お腹空いてなくても・・・どうにかして食べたいんだ・・・。
中をのぞいてみるとおばさまの姿が!もしや開いてる・・・!??(喜)
尋ねてみると、材料?が届くのが昼かららしくて今はやっていないらしい・・・。うーん、残念・・・。またの機会に。
温湯温泉と林檎の思い出
歩いてきた道を再び戻っていると、先ほどお話しさせてもらった雪だるまのおばさまに呼び止められました。
「車の中に置いてあったものだし美味しいかわからないけど・・・」と言ってなんと!林檎をいただいてしまったよ・・・!!!昨日の姫りんごに続きありがたい・・・。ほんと東北の人はみんな親切。大大大好きだ・・・。
林檎を置きに一旦宿へと向かいましょう。
まだまだ続くよ、雪の散策
お次は昨晩散策した道を歩いてみることにします。同じ道でも夜と朝とではまったく違う表情になるからどっちの時間帯も散歩は欠かせません(夜は力尽きて部屋にこもりがちだけど・・・)。
狭い道に除雪車がご登場・・・!お仕事ご苦労様です!!住んでいる人は色々と大変な部分もあるらしい(除雪された雪で家の出入り口が塞がれてしまう等)。今までは雪旅への憧ればかりだったけど、今回の旅で雪国に住むことの大変さを初めて知ったような気がします。
飯塚旅館からぐるっと振り向くと、わたしの大好きなあの建物!すでに廃業している「盛萬客舎」さんです。検索すると実際に宿泊した方の記事や写真をみることができるので、ネットがある時代にはまだ営業していたのですね。土岐客舎さんもですが、できることなら泊まってみたかった・・・。
再び後藤温泉客舎に戻ってきました。
荷造りと身繕いして鏡台のコアラにもお別れです。
温湯温泉に残る貴重な客舎。まだまだ頑張って営業を続けてほしいです。次こそは自炊するんだからな ・・・!
外に出ると、ますます雪がひどくなってきました。
「わたし今日帰れるのかしら・・・」
一抹の不安を感じつつ、黒石での最後の一日を胸に焼きつけてきます ・・・!!
■参考文献
・『知られざれる青森県』第36回湯治が生んだ温湯の共同体(青森県環境生活部県民生活文化課 県史編さんグループ主査 中園裕)
・『rakra 古津軽』ラ・クラ編集室
⑭秋田・青森ひとり旅2024-2025(もしかしたら最終回!?)へとつづく▼▼▼