彷徨する旅のアーカイブ

旅先や日常で出会った「非日常」の記録

⑪台風危機一髪!岩手お盆ひとり旅2023【黒川さんさ踊り編】最終回

大慈寺の門前に次々に集まり出したカラフルな装束の人々。果たして彼ら彼女らの正体は・・・???

逢う魔が時

CONTENTS

黒川さんさ踊り

門前で準備しているのは「黒川さんさ踊り」の踊り手さんたち。鮮やかな牡丹が咲いた花笠、腰には7色の布が垂れ下がり動くたびにゆらゆらと揺れています。白地の衣に染められた桔梗の花と「黒川」の文字は、昭和レトロでとっても可愛らしい。

絶賛準備中

「伝統さんさ踊り」と「統一さんさ踊り」

「さんさ踊り」とは、藩政時代から踊られている盆踊りで、一部県北地域をのぞく岩手県全域に見られる郷土芸能。「さんさ踊り」の中には「伝統さんさ踊り」「統一さんさ踊り」の2種類あって、前者は藩政時代からの踊りを「芸能」の域にまで高め、現在まで受け継いできたもの(かっこいいな!)。地域ごとに独自の笛や太鼓、踊り、装束が存在しており、「黒川さんさ踊り」もそのひとつ。後者は、地域ごとに異なる「伝統さんさ踊り」を誰もが踊れるように統一化し新しく創作されたもので、毎年8月のはじめに盛岡市で開催される夏祭り「盛岡さんさ踊り」のパレードで見ることができるそうです。

■参照サイト

残したい盛岡のお盆 黒川さんさの門付 | NPO法人盛岡まち並み塾

郷土芸能じぶんち 7号特集「伝統さんさ踊り」

実は今まで「さんさ踊り」の存在をまったく知りませんでした(ごめんなさい)。生まれて初めて見る岩手の盆踊り。一体どんな踊りなのかしら・・・?

お寺さんと反対方向へぞろぞろと大移動してスタンバイ

いよいよ岩手ひとり旅、最後の夜が始まります・・・!!!

大慈寺

提灯を手にした貫禄あるおじさまが先導し、一列になって太鼓や笛を奏でながら大慈寺へと向かいます。その姿に早くも胸ときめき・・・。

左には道化役の「一八(いっぱち)」の姿

列に参加せずに道路脇でひとり見守っていた道化役の「一八(いっぱち)」が、列の最後に加わります。山門へと吸い込まれる姿が、この世のものとは思えない雰囲気を醸し出していました。その姿に誘われるかのように、わたしもその後に続いてお寺さんへと向かいます。

なんだかドキドキしてきました

境内に太鼓と笛と歌が鳴り響き、大きく円を描きながら黒川さんさ踊りが始まります。軽快な太鼓のリズムと流麗な笛の音色、踊りは緩急があってとても柔らかいのに不思議と力強さも感じます。腰の色とりどりのカラフルな布が踊りのリズムに合わせて揺れてより一層華やかに。どこか愉快さも感じる穏やかな歌はずっと聴いていられる心地よさ・・・。シンプルに言って、

とても、とても良い・・・!!!

楽器を弾きながら踊るのもすごい!笛の息継ぎどうやってるの・・・??

おじさまたちも頭におっきなお花つけてるのがとても可愛い

お寺の雰囲気にもとても合っています

そして、ひとり規格外の動きをするのが道化役の「一八(いっぱち)」。衣装も他の人たちとは異なっています。他の踊り手さんに比べて動きがとっても柔らかい!(気がする!)まるで骨がないような角のない滑らかな動き。とても不思議で面白かったです。

円の中心でみんなに見守られながらひとりで踊る「一八」

よーーーく見たら・・・イタチ!??手にはなぜかイタチを持っています笑(害虫を食べてくれるからという説もあるようですが、理由ははっきりしていないそうです)

ふさふさもこもこ。本物の剥製?

実はわたくし、ダンススクールでバリバリ踊ってた過去を持っている・・・わけではもちろんない。むしろ小学校低学年時のダンス練習で、先生に名指しで動きが変と注意されたことがあるくらい苦手である(今でもはっきりと覚えてるくらいショックだったらしい)。

そんなダンス音痴なわたくしなので、見てても何がどうなってるのかまったくわからないのですが、円になって踊るだけじゃなくて向かい合ってダイナミックに交差したりして(よくぶつからないね!?)なんだかとってもすごい!気がする!!(語彙力)

かっこいいんだよー!!!

見た目はとっても乙女チックで可愛いのに実はめちゃくちゃ骨太でカッコイイ!「勇壮」という言葉がピッタリのような気がします。

踊りはクライマックスへ

大慈寺での踊りを終えると、再び一列になって山門をくぐって外へと静かに出てきます。

この一列で歩く姿も好き

休憩

階段を降りると、休憩している踊り手さんの姿がありました。

雨が降ったことに感謝する瞬間

これから場所を変えて踊りは夜まで続きます。もちろんわたしは最後まで!ついていく覚悟よ・・・!!

吾輩は金魚のふんである

山門前から移動する踊り手さんたちの後をついていくと、着いた先はわたしの大好きな湧き水場でした。

なにかと縁のある青龍水

これからどんな流れになるのかしら?まぁ、こうしてくっついてたら問題ないでしょ!・・・なーんて余裕ぶっこいていたら・・・

え?ここで踊るわけじゃないの・・・!??

再びみなさまてくてく歩いて行ってしまいます・・・(イケズな後ろ姿)

黒川さんさ踊りの門付(かどづけ)

かつて、お盆の時期には各地域の踊り組が盛岡の中心市街地に出向いて門付を行っていたそうです。黒川さんさ踊りでは、昭和40年代以降にほぼ消滅したと言われる門付を復活。

鉈屋町​界隈の家々では、お盆の時期に先祖の霊を迎え、送るかがり火を焚く風習が残っています。今日は14日。ご先祖さまのこの世への道標である迎え火が道路の真ん中で焚かれていました。観客に混じって黒川さんさ踊りを一緒に観て楽しんでるんだろうなぁ(もしかしたら踊ってたり?)

かがり火

夕闇に浮かび上がるかがり火を囲み、黒川さんさ踊りの門付が始まります。

あ、あれ?最後に到着したはずなのに、棚ぼた的にベスポジをゲットしてしまったようだぞ?

鉈屋町の風情ある街並みと、時折火の粉を夜空に散らしながら燃えるかがり火。あたりがどんどん暗くなるにつれ、黒川さんさ踊りがどんどん輝きを増していきます。

か、かかかかっこいいーーーーー!!!!!

なんていうんでしょう?まるで戦隊モノのヒーローのような?そんなカッコよさ!!!踊り終わった瞬間すべての悪が浄化されて世界が平和になるのでは・・・???というような妄想にかられてしまうほどの圧倒的パワーでした。

わたしも成仏しちゃいそうだよ

ところで、すっかり陽も落ち、かがり火で照らされた雰囲気満点の空間が出来上がっているにも関わらず、わたしの腕不足&カメラのパワー不足でまともな写真がぜんぜん撮れず・・・(ISO感度上げるとザラザラになるし、下げるとブレッブレの写真しか撮れないし)。もう・・・完全にお手上げです!!!

ブレがいい味出してると思ってくれ

そんなわけなので、動画をおたのしみください・・・。一八にイタチで頭ちょんちょんされる女の子かわいいな!(わたしもちょんちょんされたかった!!)

お寺さんの境内での踊りもとてもよかったけれど、この場所で見た黒川さんさ踊りが一番大好きでした。鉈屋町の風情ある建物に囲まれ、踊り手の息遣いが感じられるような小さな空間で、かがり火に照らされた迫力満点の踊りをこんな間近で見ることができるだなんて・・・最高に幸せだよ・・・・・。

踊りが終わると次の場所にみんなでぞろぞろ大移動するのもたのしかったです。

照明が星型なのはたぶんオールドレンズつけてたからだと思うけど、なんのレンズ使ってたっけ・・・(記憶力・・・)

最後の舞台は「もりおか町屋物語館」。もうこのあたりではあきらめてほとんど写真撮ってなかったよ?

はい、ブレてまーす

写真を撮らず、踊りに集中できるのも喜び。だけど自分の実力で写真がうまく撮れないのがとても悔しい・・・

踊りを見てたらこっちに向かってコロンコロン!と落ちてきた小さなシルバーの鈴。踊り手さんたちの装束の背の襟下には可愛らしい小さな鈴が付いているのです。

3つの鈴がリン!

踊ってる最中に取れて踏んずけぐにゃりと潰れたようで音も鳴らないけれど、記念に持って帰ることに。きっとこれは幸運の鈴に違いない!大切にしたいと思います。

どの踊り手さんのものだったのかなぁ

最後にちょっとしたプレゼントをもらって(勝手に)、黒川さんさ踊りは終了。18時から20時過ぎまで約2時間ほどでした。あっという間だったけど、色々な場所でたっぷり踊りを見ることができてとっても楽しかった!台風で1日早く帰っていたら見れたなかったんだよなー(みんな忘れてると思うけど、わたしももう忘れてたけど、深刻に台風危機一髪旅だったのじゃよ・・・?)岩手旅最後の夜を、黒川さんさ踊りで終わることができて本当によかったです。

ところで、記念に最強の失敗写真でも最後に載せておこうかね?

嗚呼、愛しき失敗写真

最後の盛岡観光

実はこの黒川さんさ踊りの最中に、色々とよくしてくれたカメラマンおじさまがおりました(さんさ踊りの撮影スポット教えてくれたり)。最後のさんさ踊り会場では陣取った場所で偶然隣同士になり、なんと帰りは宿へ車で送ってもらえることに・・・!さらに宿へ送ってもらう前にちょっとした盛岡観光をして帰ることにっ。何から何まで本当にありがとうございます・・・!!!

鹿島精一記念展望台

まずは盛岡の夜景を一望できる展望台へ。UFOみたいな面白い形してた・・・!好き!!

夜でよく見えなかったけどたぶん好き
三角形の螺旋階段も!好き!

個人的に気分がアガる好きな展望台でした。

あ、もちろん盛岡の夜景も拝んできましたよ。そしてついでに夜景の撮り方も教えてもらいます(夜の撮影、これからは頑張りたい)。

無駄にボケさせたくなる病

おぉ、わたしなんだか普通に観光してるっぽい!観光してるっぽいぞ!!

夜景を楽しんだ後は、夜の近代建築巡りをして(再び人魚の写真館、その前にある肉屋さん、盛岡銀行等)、美味しい冷麺のお店を教えてもらって宿に届けてもらいました。歩いてだと絶対に行けなかった展望台にも連れて行ってもらえたし、鉈屋町から離れていた宿にも車でひとっとび!ほんとになんてラッキーなのだ・・・。旅先でいい人に出会えてしまう、もうこれは才能なのではないだろうか・・・(自画自賛がすぎるぜ)。

大盛り冷麺

時計の針はすでに22時前。入店したのは宿近くのぴょんぴょん舎。最後の最後にやっと本場の盛岡冷麺にありつけたー!そう、わたしは岩手ならではの食べ物がずっと食べたかったのだ・・・涙

盛岡冷麺

荒ぶってうっかり大盛り頼んだら、大盛りすぎて最後は苦しみながら食べるはめに・・・。美味しかったけど、なんでもほどほどに・・・ですね(毎回そう思うのに、同じ過ちを何度も繰り返すのである)。

カメラマンおじさまにオススメされた盛岡フードの「じゃじゃ麺」(3回目くらいにクセになる味らしい)、今度旅した際にはぜひ挑戦したい。あと、人魚の写真館前の肉屋さんのお肉も。朝市で食べれなかったひっつみも食べたいよー!喫茶店にも行けなかったし。次の旅では郷土色の強いものをいろいろと貪欲に食べ尽くしたいと思います!!

岩手最後の朝

朝目覚めると、雨が降っていました。今日はもう福岡へと帰るだけ。でも、わたしには最後にやらなければならないことがあるのだ・・・!!!

雨に濡れたさんさ踊り

福田パン

盛岡滞在中、2日続けて振られ続けた福田パン。知らなかったんだけど・・・盛岡駅の中にもお店があるんだね???ただし、こちらで扱っているのはすべて出来合いのコッペパン。自分で中に挟む具材を選ぶことはできません。次は必ずや本店で自分チョイスのコッペパンを食べたいと思います!

どれにしようかな♪

心残りの岩手ミッションを完全ではないまでもひとつ回収し、とうとう初めて旅した岩手とのお別れです。遠野から始まり、盛岡、江剌、一関と駆け抜けた約4日間。ちっとも足りない!足りないよ!!再びこの地を訪れることを夢見て・・・。

さらば!

東京へと向かう新幹線の中ではもちろん買ったばかりの福田パンで朝食タイム。昨日雨で当初の目的の鹿踊が中止にならなければ行くはずだった「うれいら通り商店街」。その近くにある鍾乳洞から汲まれたという水が使用された「龍泉洞珈琲」を飲み、「いつかかならずここにも行くぞ・・・」そう心に誓いながらパンをもぐもぐ頬張ります。

精神を研ぎ澄まして15%を感じ取りたい

正午すぎに東京駅に到着し、羽田空港へ。神戸、大阪あたりを攻めてる台風を避けて福岡へと到着!!!最初はどうなるかと思われた岩手ひとり旅。台風の直撃は免れたものの、遠野や盛岡では悪天候に振り回され予定変更を余儀なくされました。でも、そんなハプニング含めとっても思い出深い旅に・・・。

Googleマップと飛行機のモニターより

最後に

いつもは公共の交通機関と己の足で辺境の地を巡る旅をしがちですが、今回は人に助けられた旅になりました。ひとり旅だけど、たまにひとりじゃない。人に会いに行く旅の形も、たまにはいいかもしれないなぁー。全国にそんな人たちを増やしていけたらいいな。なーんて、人見知りなりにそんな風に思ったりもして、新しい視点を得た旅にもなったような気がします。

しかし、おんぶにだっこしすぎて「このままでいいのか!??」と不安になったのも事実。自分を追い込んだ旅も、無理しない程度に続き続けていきたいと思います!そのためにはいつまでも健康でいなきゃね・・・!!

思い出のカケラたち

さて、今回の黒川さんさ踊りで、夜の撮影、しかも動いている人物の撮影の難しさを痛感したわたくし・・・。今までAPS-CサイズのFUJIFILMのカメラを使っていたのですが、この件をきっかけについにフルサイズのカメラに手を出してしまいました!(底なし沼にずぶずぶずぶ・・・)新しいカメラを手に、これらも全国各地を巡っていきたいと思います・・・!!!

【完。そして旅は続く】

【使用カメラ】digital:FUJIFILM X-T3、SIGMA dp3 quattro、iPhone SE2、film:CONTAX Aria