彷徨する旅のアーカイブ

旅先や日常で出会った「非日常」の記録

温泉地で異彩を放つ宇宙基地「なのはな館」

すっかり初夏の陽気の2023年のある日、鹿児島の実家に帰省することに。そのついでにずっと行きたいと願っていた場所がありました。

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摩訶不思議建築

わたしは伝統を感じさせる日本の木造建築が大好きなのですが、それとはまったく逆をいくような不思議建築も大好物!(なんてカテゴライズされているのかちっともわからない)これまでのブログでもいつくか紹介してきましたね。

■海のピラミッド(熊本県宇城市)

■玉名展望館(熊本県玉名市)

■内住コミュニティセンター(福岡県飯塚市)

未来を夢みて作ったような雰囲気。レトロフューチャーというのかな?無機質な素材なのにどこか有機的で生命を感じさせるフォルム。建築家の主張が強すぎる個性まるだしの建物。使い勝手はとても悪そう・・・。

建築に限らず人でもなんでもそんな強烈な個性を放つ唯一無二のものに惹かれてしまうのは、これはもうわたしの性癖と言ってもいいかもしれません。

さて、そんな建築を求めて今回訪れたのは、温泉地として有名な鹿児島県指宿市。先述した玉名展望館と同じ建築家髙﨑正治さんの手による「なのはな館」です。

指宿へ

鹿児島中央駅から在来線に乗り換えて、車窓から海を眺めながらのんびり指宿へと向かいます。

とても美しい青

どうやら指宿駅からバスが出ているようですが、わたしは無駄に歩きたい人間なので、指宿駅のひとつ前の駅の二月田駅で下車。ここから歩いて向かうことにします。

見上げると青空にいくつものひこうき雲が・・・。

濃く深い青に白いラインが清々しい

そしてその先に・・・

目を凝らすと・・・

な、なんだあれは・・・!!!

まるで宇宙基地?もしくは中世ヨーロッパの甲冑のような??

摩訶不思議建物が初夏の熱い日差しを受けて、ギラギラとメタリックな輝きを放っていました。目の前に突如現れた異様な光景ににテンションが上がります。

いますぐ飛んでいきたいけれど、どうやらまだ先は長そうだ・・・。

鯉のぼりがのぼる季節でした

もちろん途中で腹ごしらえも忘れずに・・・

「りとるcafe」さんのオレオチーズ美味しかった!

胃袋を満たし、いざ「なのはな館」へ!!!

ふれあいプラザなのはな館

ワクワクしながら広大な敷地内へと足を踏み入れます。

か、かっこいいーーーーーー!!!

「なのはな館」は1998年竣工の複合施設。すでに25年もの年月が経過しており、当初は教育・文化施設、健康増進施設(なんかすごいネーミングだな)、宿泊施設、体育施設、野外劇場、ランドスケープなどがあったようですが、そのいくつかはすでに閉鎖され、現在使用できるのは一部のようです。うーん、こんな立派な施設なのに・・・悲しい現実。

トイレ案内の看板に全体像がありました。今では地面は芝生で青々としています

いよいよ探検スタートです!

と!げ!と!げ!!!

さっそくモンスターっぽいトゲトゲ建築が現れました。この四阿のような建物は、長い回廊とつながっています。

繰り返される曲線の美

回廊の途中では、可愛らしいブラシノキが赤い花を咲かせていました。

ほんとにブラシみたい

光がとても綺麗でうっとり・・・。

光と影

そして回廊の途中で再び現れる不思議空間!!!

何かと交信できそうだ

回廊を行き止まりまで進むと、今では使えなくなったトイレがありました。

トイレの天井を見上げると幾何学的な模様と幻想的な青い光

引き返して体育館と多目的広場の建物が並ぶ場所へ向かいます。

左が多目的広場、右が体育館

多目的広場の中を覗くと・・・

恐竜の背骨のようだ

一直線に同じ方向へとぞろぞろ歩くお爺さまたちの姿が見えました。おそらくゲートボールをしにきたと思われます。

未来的な建物とゲートボールのスティックを手にしたお爺さんとのミスマッチ感がたまらない

まるでロケットのような建物の方へと吸い込まれていく姿をぼんやり眺めていると、突然頭の中に映画「アルマゲドン」のエアロ・スミスのBGMが流れてきました。

『アルマゲドン』⁡テーマ曲 - YouTube

戦いに挑みにいく凛々しき後ろ姿

わたしたちを助けるために宇宙船へと乗り込むブルース・ウィリスの姿と完全に重なります・・・!!!そんな妄想が頭の中を駆け巡り可笑しくて思わずニヤニヤ・・・。どんどん楽しくなってきました。

一番の目玉ともいえるロケットはメインディッシュにとっておくとして、横の体育館へと目を向けます。

うねうね波打つ造形がおもしろい!子供たちが使用していたので中の撮影は遠慮しました

絵になる空間が多すぎる・・・。ちっとも前に進めません。

濃い影

そして施設内の目玉のひとつともいえる空間が現れました。

迫力満点!なのに・・・

カメラに全然入りきらなくて、この迫力がちっとも伝わりません・・・(超広角レンズじゃないと無理!)。
天井に無数に開いた穴からこぼれる自然のスポットライトが、地面に水玉模様を描いていました。

まるで星空

健康増進施設

横に視線を向けると「健康増進施設」の文字が目に入りました。気になりすぎる・・・。

つまりは「浴場・プール」のようです

壁沿いを進むと裏へと周れそうな隙間があります。もちろん・・・行くっきゃないよね!!

隙間があれば進んでしまう。そう、それがわたしの習性

道を抜けると、まるで忘れ去られた古代の神殿、もしくは滅びた近未来の文明(変な言葉だけどニュアンスを感じ取ってほしい)・・・といったような雰囲気の空間が広がっており、わたしの琴線にビシバシ触れてきます・・・。

ここにもブラシの木が

なんだろう・・・?と思って近づくと

ゆらゆらと人の幻影

中を覗くと・・・キュン!!!

ここに寝転びたい

使われなくなって相当の年月が経っていると思われます。鼻血が出そうなくらい魅力的な建物なのに、実際にこの地に住んでる人たちにはあまり伝わっていないのかもしれませんね・・・。このまま朽ち果ててしまうのかと思うと残念でなりません。

本館内部へと潜入

忘れ去られた施設を後にして、本館内部へと潜入捜査(開いているから自由に入れる)。入口はいくつかありそうだけど、わたしは階段を登った先の扉から入りました。

古代の日時計?オベリスクーーーー!??
って感じで何気にこの柱にもときめいた

内部もとってもおもしろい!リズミカルに浮き出したフォントも可愛いです。

まんまる窓からの風景

和風っぽい扉もありました。

中もみてみたい

先ほどゲートボールのお爺さまたちが向かっていたロケットのような建物は中央ホール。中には入れませんでしたが扉から覗くことができました。

入ってみたいよ〜

禁止とは書かれていなかったので、窓からこっそり外に出てみることに・・・。

本館の真向かいにある野外ステージ

1階には人の気配がしてドキドキしたので、2階だけの見学にとどめて外に出ることにします(人見知りだから・・・)。

こんなに近くにロケットが!ドングリみたいで可愛い

先ほど歩いた回廊の反対側にも同じような回廊があり、その先にもトイレがありました。市の施設配置図によるとそれぞれ「海の園亭」、「太陽の園亭」とちゃんと名前がついているようです。細かいコンセプト聞いてみたいよ〜。どこかに資料が落ちてないかしら・・・。

そうか。太陽だから、天井からこぼれる光はオレンジ色なのね。先に見たトイレは海の青でした

では、最後にメインディッシュを遠くからじっくり眺めることといたしましょう。

180度なめまわす

グラウンドでは先ほどロケットに飛び乗り出発するかと思われたお爺さまたちがゲートボールを楽しんでおりました。平和だ〜。

ロケット前で休憩中

ロケット向こうに顔を出している屋根は、先ほど通り抜けた自然のスポットライトの場所。遠くから見る姿はまるでメカニック王蟲!!!(ナウシカは全人類の共通言語)

赤と青どっちに光りますか

「なのはな館」めちゃくちゃ楽しかったです!!!

まだまだいようと思えばいれたけど(むしろいたかったけど)、電車の時間が迫っていたのでさよならすることに・・・。

またいつかじっくりと

名残惜しく思いながら、今度はてくてく指宿駅へと歩いて向かいます。

途中で見かけた建造物もツボった!これは貯水塔・・・?

指宿駅に無事到着。本当は温泉に入ってゆっくりしたかったよー。

今度はゆっくり泊まりたいな

最後に

玉名展望館を見た時も思ったけれど、髙﨑正治さんの建物は目に見えない何かと交信するためのような不思議空間があちこちにあって面白い!「なのはな館」もいるだけでイマジネーションが次々にわいてくるとっても刺激的で素晴らしい建物でした。夜の明かりのともった姿も見てみたいなぁー。髙﨑さんのサイトにいくつか写真が載っていたので以下にリンクを貼っておきます。写真自体もめちゃカッコいいからぜひ見てみて!

なのはな館(全部で3ページあるから見逃さないように!他の建築も載っているので興味のある方はぜひ)

指宿に行った際には温泉だけじゃなくてぜひ「なのはな館」も見てほしいな。どこをとっても絵になるから撮影スポットとしてもオススメです。建物自体が古く、活用されていない建物も多いので今後の行く末がとても不安・・・。末長く活用されていくことを切に願います!!

さて、最近は郷土芸能や祭礼、伝統行事などに興味が行きがちですが、今でももちろん建築を見るのが大好き!これからも九州の摩訶不思議建築をはじめ、全国の魅力的な建築をいろいろ巡っていきたいと思います。

※めずらしく今回は1話完結です・・・!!!

【使用カメラ】digital:FUJIFILM X-T3、SIGMA dp3 quattro、iPhone SE2