彷徨する旅のアーカイブ

旅先や日常で出会った「非日常」の記録

02.冬の山形ひとり旅2024【嗚呼、麗しの喜至楼・後編】

喜至楼へと帰りついたのは17時過ぎ。18時からの夕食タイムまで温泉を楽しむことにいたしましょう。念願のローマ式千人風呂へ・・・!!

CONTENTS

まるで宇宙!ローマ式千人風呂

脱衣所に入ると真っ先に目に飛び込んできたのが棚上で繰り広げられているユーモラスな彫刻物語。白いお犬と、おいでおいでしているおじいちゃんの手元にはクワ、中央には岩場からゆらゆら湧き出る温泉マーク。「温泉ここ掘れわんわん!」みたいなことなのかしら・・・?まるで昔話のワンシーンのようです。

(注)外が明るい写真はお散歩に出る前に撮った写真

それとも畑仕事疲れたから一緒に愛犬と温泉でのんびり?とか??

脱衣所ではやくもテンション上がりながら、服をぬぎぬぎして浴室へ。目の前には湯気のベールに包まれたローマ式千人風呂が・・・!!!

ときめきが止まらないよ!

なんて素晴らしき空間なのだ・・・。まんまるの浴槽の床のボロボロのタイル模様がまるで地球に見えて宇宙を感じてしまったよ・・・!!

天井から滴る雫の波紋にもうっとり・・・

昔は中央の円柱から温泉が湧き出ていたのだろうなぁ

円柱や壁、床のランダムなタイルからグラデーション流れる様も美しい・・・。

もしかして「キシロ」って書いてる・・・!?(シが読みにくいけど)

芸が細かい!

温泉(源泉?めちゃ熱かった)がちょろちょろと上から落ちてくる石積みの不思議空間ではドクロと目が合ってキュン!

角度によって現れるドクロ。行ったら探してみてね!

ギリシア神話のモザイク画

そしてなんといっても印象的なのは、思わずクスッと笑ってしまうようなほんわかした壁のモザイク画。

胸板が厚くてとってもたくましいけど(もはやおっぱい?)、なんだかとぼけたお顔の半人半獣おじさん!!!気づけばこっちまでこんな表情してしまいます。

一体どんな表情??笑

手をのばした先には麗しき女性の姿・・・。

こちらはギリシア神話のパンとシュリンクスを題材にしたモザイク画。脱衣所に書かれている解説文には以下のように書かれていました(要約)。

牧神とも呼ばれる半人半獣のパンが、水浴びする森の精シュリンクスに思いを寄せて追い回します。迷惑したシュリンクスは女神アルテミスに助けを求め、その身を葦(あし)に変えてもらいます。落胆したパンはその葦で笛を作り心を慰めるのでした。

(わたしがシュリンクスだったら笛吹かれるのイヤすぎる・・・)

解説文

作曲家のドビュッシーは、その神話をもとに書かれた詩にインスピレーションを受けて「牧神の午後への前奏曲」を作曲。日本では1920(大正9)年に初演されたそうです。

ということはこの浴室が作られたのは大正9年以降ということだよね。本館は明治時代の建物という話だけど、浴室だけ改装されたってことなのかな?詳しくないからわからないけど、ローマ風の浴室も日本で作るのが流行った時期がありそう。いまいちどの部分がいつの時代の建物なのかはっきりわからなかったので、宿の方にちゃんと聞いてみればよかったなー。

ちょっと脱線するけど「牧神の午後」といえば、わたしにとってはニジンスキー。ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」で初めてバレエの振り付けをして自身で踊るんだけど、跳躍を排除した当時では革新的踊りや、最後はニンフ(精霊)の落としたヴェールで○○するという露骨な性的表現で賛否両論を巻き起こしたらしい。気になる方はぜひ山岸涼子の『牧神の午後』を読んでみてね!(わたしもそれで知った)

こちらは押入れの中から引っ張り出した伝記本『ニジンスキー神の道化』

つまり、ローマ式千人風呂のモザイク画はパンがシュリンクスを見染めたシーンだったのですね。パンのなんともいえないデレッとした表情も納得がいきます。

そんなモザイク画を眺めながらローマ式千人風呂をひとりじめする贅沢よ・・・。

つまりはしあわせである

山形の郷土料理に舌鼓

ちょうどいい湯加減の温泉に入って体はぽかぽか。夕食の時間になったので「若菜」のお部屋へと向かいます。

嬉しいことに個室!時代を感じさせる「喜至楼」と書かれた立派な書が目の前に掲げられています。

布袋さまも万歳

お食事の前にお酒を勧められたので、どうせなら地酒が呑みたいなぁーとぞろりと並んだ日本酒を物色。

悩んでこちらのお酒に決めました。「山と、水と、」というネーミングと鳥のイラストがオシャレ!完全にジャケ買いです。あと「最上町限定流通」という文句にもやられましたね・・・。後で知ったのですが、喜至楼の公式サイトから予約すると1ドリンクのサービスがあったらしい!

生酒。とても呑みやすくて美味しかった!

今回は郷土料理プランで予約。山形の郷土料理・・・ちっとも知らないので、食べながらお勉強。馬肉、豚肉、ミミガー!?(味音痴なので違ったらごめんなさい)お吸い物・・・このあたりの品は山形の郷土料理でもないのかな?他にはお蕎麦や、小鉢が色々と(美味しいけどわたしには何なのかはわからず)。

旅館めし

焼きたてのあっゆ!!!

松原鮎。この辺で獲れたものらしい。右下にはちょこんと「しそ巻き」

そしてミニ土鍋の蓋を開けるとまさかの蟹・・・!!!

この味噌仕立ての蟹のお鍋がめちゃくちゃ美味しかったー!!!川で獲れるモズクガニというものらしい。正月の竹崎島ひとり旅でも竹崎カニを食したばかり。まさかこんなにすぐにカニに縁があるとは・・・。その時にカニは食べるのが面倒で味もあまり興味がないと言ってたけれど、もずく蟹めちゃうまくてカニへの意識が180度変わってしまったよ・・・。なによりスープがめちゃくちゃ美味い・・・水筒に入れて持ち歩きたい・・・。カニ自体は小さいから身も少なくて(というかほとんどない)食べにくかったけど(めんどくさいの極致!)、身の味が濃くて美味しかったからバキバキに破りながら頑張ってほじくって食べました笑

美味しいお酒と旅館めしにダウン?

朝からおやつしか食べていない状態で日本酒をかっこみ、ボリュームたっぷりの旅館めしを胃袋に突っ込んだからか、食事が終わる頃にはなんだかとても苦しくて立っていられない状態に・・・。これはいかんと部屋に戻って「もう無理無理ー無理無理ー」ってなりながらダウン・・・。30分くらい横になっているとやっと落ち着いてきて、明日の計画の練り直しをできるくらいに復活。旅の初日から一体どうなることかと思ったよ。食事は考えてとらないといけませんね・・・気をつけます・・・。

旅程も練り直したことだし、今日は無理しないでもう寝ましょうね。

旅館では浴衣チェックしてしまいます。オリジナルだととても嬉しい。ま、着ないんだけどね!(着崩れして寝苦しいから自前の寝巻きを持ち込む人間)

ここにも「㐂至楼」

朝が来た

山形2日目の朝がやってきます。

部屋からの景色

7時半からの朝食を食べるために、当初の計画で乗るはずだった早朝の電車には乗れません。次の電車がくるのは11時前。つまり時間はたっぷりです・・・。

朝食

のろのろ朝食会場へと向かうと、昨日は気付かなかった学生さんと思しき若い少年少女たちがたくさん!不思議に思っていると、机の上には「新庄第一自動車学校」の文字。どうやら合宿免許を取りにきている子供たちのようです。なるほど、本館はこの子たちで埋まってたのね・・・!!

わたしも山形に生まれてたらここで免許とりたかったわ

ごはん等はセルフで「しそ巻き」も取り放題。(だけどたくさんは食べれないことをわたしは去年の岩手旅で学んだのだ)

学生さんが白ごはんにお線香のようにブッ刺していて、地元の子たちはそんな食べ方するんだ・・・!とちょっと感激

ピッチピチの少年少女たちが会話している中に混ざって、一緒に朝食をいただきます。青春だわ。眩しいわ。

干物うれしい

宿のおばあちゃんが作ってくれた調味料。何にかけるのか聞き漏らしたけど温泉たまごにかけたら美味しかった!

喜至楼、温泉めぐり

ごはんのあとはもちろん朝風呂です。実は朝風呂に入りたいとはちっとも思わないわたくし。そもそも自宅ではカラスの行水人間なのだ。でもね、電車の時間までやることないんだよ・・・。昨日の散歩を今日にまわせばよかったね・・・。

オランダ風呂

まずは別館のオランダ風呂をのぞいてみます。

実は昨日は本館に夢中になりすぎてあまりみていなかった別館。洗面所に素敵な鏡をみつけて嬉しくなりました。

「㐂至楼」と古い電話番号の文字。上の温泉マークと「せみ」もイイネ

でも、やっぱり本館を欲してしまう・・・!!

オランダ風呂には入らずに、実は最初から心に決めていた本館の「あたたまり湯」へと向かうことにします。

あたたまり湯

「あたたまり湯」は、本館1階の「ローマ式千人風呂」の手前にあります。

もうね、ここの何が好きって、

棚上のキューピー&金太郎だよ・・・!!!

なななななんでキューピー???金太郎と温泉マークの押し合いしてるよぉーーー

キューピー人形は大正時代に日本でも作られるようになって大流行したそうです。こちらの棚もきっと大正〜昭和初期頃に作られたものなのでしょうね。ちなみにお客さんがいない時にお隣の男湯をちらっとのぞいてみると・・・

らぶりー熊ぁぁぁぁぁーーー!!!!!

熊と金太郎はテッパンですね。男湯に合わせて女湯は熊の代わりに流行りのキューピーになったんだなぁ。作った人、グッジョブ・・・!!!

 

さぁて、そろそろ温泉に入りましょうかね。

ここでも温泉ひとりじめ

ぽかぽかぬくぬく・・・じゃないな?ぬるくて寒い、寒いよ・・・???ぬる湯好きではあるもののこのままでは風邪をひいてしまうのでは・・・!??お願いしたら温度調節してもらえるのだろうけど、ちょいとめんどいのでここで腹をくくります。

よし!ローマ式千人風呂で混浴タイムチャレンジだ!!!

混浴のローマ式千人風呂

朝のこの時間帯は混浴タイム。男性客と遭遇せずに果たして温泉に入ることができるのか・・・!?数年前、青森の某温泉旅館で間違えて男湯に入ってマッパを見られたわたしに怖いものはない・・・!!!(嘘です、怖いです、もう見られたくないです)

スリッパを扉の前で脱いで入ってますよアピール

朝は光の入り具合が昨日の午後とはまた違っていてとっても綺麗〜!

勇気を出してマッパ!

やっぱりこっちの方があったかくて体の芯からあったまる〜!!!

昨日は気付かなかったけど、浴槽のフチのタイルもかわいい。桃色とペパーミントの間に濃いネイビーを合わせるセンスに脱帽です。

あれ?なんか床に落ちてるな・・・。手探りで手に取ってみると・・・

タイルの欠片・・・!!!

宿の人に言ったら記念にもらえないかな・・・なんて頭をよぎったけれど、そっと元に戻しておきました。思い出は心の中に・・・。

そんなわけで、混浴タイムミッションも無事クリア!今回もずっと素敵空間をひとりじめ。昨晩から誰にも裸を見られることなく、温泉をたっぷり満喫することができたのでした。

朝のお散歩

喜至楼の建物と温泉をたっぷり堪能して10時きっかりにチェックアウト。たまにはこんなのんびり旅もいいね!

電車の時間までもう少し時間があるので宿に荷物を預かってもらい、昨日歩いていない道をてくてくお散歩。山形に着いてから一度も雪は降っていないのに、雪がまだまだ残っていてくれて嬉しいなー。

雪だ雪だ雪だ!相変わらずテンション上がる

歩いているとお墓が見えてきました。

昭和初期の橋

その先には昭和5年に架けられた一澤橋。こういった素朴な石橋が大好きなのです。

ずっとひっそりと残っててほしい

今朝はとてもいいお天気。橋の横では朝日で雪がキラキラ輝いていてとっても嬉しくなってしまった!もちろんウキウキしながら雪ふみに興じます。あれ?昨日のお散歩でも同じことをしていたような・・・?

永遠に遊べる

そろそろ電車の時間が近づいてきた。来た道を引き返さなきゃ!

薬研湯

最後に訪れたのが喜至楼の目の前の川を降りたところにある「薬研湯」。

産湯を求め弁慶が岩をかち割り温泉が湧き出たという瀬見温泉はじまりの湯です。わたしがやんちゃだったらここでひとっぷろ浴びるのですがもちろん見てるだけーーー。

雫がキラキラ

喜至楼で荷物を受け取り、瀬見温泉駅へと向かいましょう。

川沿いの雪には獣のような足跡

駅に到着すると、すぐに電車がやってきました。

ローマ式千人風呂で温まった体はすっかり冷えてしまったけれど、心はぽかぽか温まったまま次なる場所へと向かうのでありました。

【使用カメラ】digital:SONY α7III + NOKTON classic 35mm F1.4、SIGMA 24mm F1.4、SIGMA dp3 quattro、iPhone SE3、film:Konica AUTOREX + HEXANON AR57mm F1.4

03.冬の山形ひとり旅2024へとつづく▼▼▼