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雨の竹崎観世音寺
土砂降りではないものの、わたしの願いも虚しく相変わらずの雨・・・。昨日準備が行われていた建物に向かってみると、ちょうどお祭り前のお経を唱えているところでした。
見学もほどほどに、早速お寺へと向かうことにします。
お祭りが始まる前に、本堂内をじっくり見るチャンスです・・・!!!
祭壇には鏡餅や稲穂、野菜や柑橘などがお供えされています。童子たちの貝に入れる稲穂もここから取っていました。
そもそも鏡餅ってどんな意味があるんだっけ?気になったので調べてみました。
鏡餅(かがみもち)とは、餅を神仏に供える日本の伝統的な正月飾り(床飾り)であり、穀物神である「年神(歳神)」への供え物であり、「年神(歳神)」の依り代である。鏡餅という名称は、昔の鏡の形に似ていることによる。鏡はこの世とあの世の境界と捉えていた。昔の鏡は青銅製の丸形である銅鏡で、神事などに用いられるものであった。三種の神器の一つ、八咫鏡を形取ったものとも言われる。
鏡餅 - Wikipedia より抜粋
へーへーへー。歳神さまへのお供物&依り代で、「鏡餅」の名前は昔の鏡に似ていることからそう呼ばれるようになったのね!内陣正面の両側に飾られている装飾されたお餅はまんま鏡の形だよ・・・!!
本来なら日中行でも昨晩と同じように荷を抱えながら階段を登ってくるはずなのですが、すべて本堂に置かれたまま。やはり今日は雨のため本来の形では行わず、すべて室内で行われるようです・・・。
祭壇両側の畳の上には、子どもたちが頭に被る魚笠や籾殻を入れてた貝などの道具が一式置かれています。そしてその奥には・・・
・・・異形の面!??
ぐりっと飛び出た目玉にとんがった鼻、ぐっと食いしばった口。真っ黒な肌に白い線が躍動し、荒々しくて迫力あるのにどこかひょうきんなお顔。なんて味わい深い面なのでしょう!!
もしかしてこれが鬼・・・???
と思ったけれど、どうやら「翁面」らしい。翁=お爺ちゃんのイメージだけどちっともそのようには見えず、まるで鬼か天狗のようだ・・・。
鬼の逢瀬を阻止するための祭りですが、肝心の鬼の面は鬼箱に入れられたまま、代々の住職ですら見てはいけない秘面であるという。トキメキがすぎるではないか・・・!!(鼻血案件)いつの時代に作られたもので、一体どんな姿形をしているのでしょうね・・・どきどきわくわく。
ちなみに昔(少なくとも1665年頃まで)は、実際に鬼の面をつけて責める形の行事が行われていたようです。
現行の行事では、鬼は鬼箱に閉じ込められたまま四名の鬼副に擁護されて、最後までその姿を表すことはないが、古くは鬼面をつけた者を実際に責める行事であったという。市場直次郎氏は、寛文九年(一六六五)大木英鉄の序ある『肥前古跡縁起』に、「古へ故ありて鬼祭と云祭礼をなす事あり(略)毎年正月六日、此神事をなすこと、白布の袋に人を入、口をくくり、鬼面をかけさせ、拝殿におどり出れば、人々首に縄を付てあたりを引き廻す。所在のわらべども、竹の枝など面々持て、此鬼舞を打ちたたく(略)」と記されており、現在とは異なる鬼責めを行っていたようであると記しておられる。
「追儺・修正会結願の鬼行事 その地方的受容と展開―九州地方を中心に―」中村茂子著 より
今では鬼箱に収められている秘面が、その鬼責めに使われていたものなのかは分かりませんが、時代が下るにつれてどんどん祭りの形が変容していったのですね。おもしろい〜。
お堂内には、一番賑わっていた頃というお祭りの写真が飾られていたました。今では行われていない鬼箱の鬼を封じ直す「鬼攻め」のシーンです。見てみたかったなー。
壁には祭りの流れが書かれた張り紙も。その時にはちっとも気づかず全部撮れてなかったよね・・・(相変わらず残念な我が注意力)
そろそろお祭りが始まる13時。撮影スポットで待機せねば・・・!!!
日中行
本堂から太鼓と鉦の音が鳴り響きます。
その音を合図に、階段から傘を差した人々が次々に登ってきます。晴れていれば遠くには青い海と空が広がってさぞ美しい光景だったろうなぁ・・・。
鬼副と呼ばれる若者ふたりが2本の棒を槍投げのようにお堂(というよりも空?)に向かって掲げたかと思うと、勢いよくお堂に向かって走り出します。
後に続いてぞろぞろぞろ。わたしたちも本堂の中へと参りましょう!
太鼓経・フレイ経
本堂内では昨晩と同じようにお坊さまのお経ソロに始まり、お経&太鼓セッション、子どもたちの籾殻わっしゃー!へと続きます。
籾殻をわっしゃー最後にぶちまけるフレイ経がやっぱり好き!このフレイ経は初夜行、今では行われていない後夜行、日中行すべての行で行われるからとても大事なものなんだろうなぁ。
大聖棒(だいしょうぼう)打ち切り(1回目)
お次は鬼副ボーイズの一人が48本の樫の木を一つに束ねた大聖棒を担いで現れます。この鬼副は毎回かっこいい青年が選ばれると、昨日焚き火していた時に少しお話させていただいたおじさまが教えてくれました。
「だいしょーーーう だいしょーーーう」
周囲の掛け声に囃し立てられながら、お堂の入口で大聖棒の束をゆらゆら床に向かって揺らした後、振りかぶって階段の角に勢いよく打ち付けます。
どうやら結んでいる縄を切らないといけないらしい。何度も挑戦するのですがなかなか切れず・・・(思わずガンバレーと言ってしまう)。
そんな時はおじいちゃんの七つ道具、カッターのご登場だよ!
と思ったら・・・切り過ぎたようで、振りかぶる前に切れちゃった・・・!!!
しゃーないので、このまま振りかぶってーーーー
するけど、やっぱり切れない・・・。このぐだぐだっぷりが可笑しくて愛しい!
もうえーじゃろーーーっと、棒をひっぱり抜いてバラバラバラーーー
傍観者だった人たちが一斉に棒に群がります・・・!その勢いにびっくり・・・!!!
老若男女入り乱れ、あっという間になくなってしまいました・・・。
どうやらこの大聖棒にはご利益があるらしく、2本も3本もゲットしている人もいました。欲が深いねぇ〜(人のこと言えない)。
天狗拍子
そして再び童子たちの出番。本来ならここから庭に降りて行われるのですが、あいにくの雨。すべて本堂の中で執り行われます。
童子たちがそれぞれ赤と緑の扇を持った左手同士を繋いで引き合いながら、右手のマラカスみたいな鈴をふりふりーーーふりふりーーーーー。お坊さまの言葉に合わせて舞いを披露します。
大聖棒打ち切り(2回目)
そして2度目の大聖棒打ち切り。相変わらずのぐでぐでっぷりでカッターおじいちゃんが何度も登場していました笑
なんとか縄を切って棒をぶち撒けます。棒に群がる人々の熱量もやっぱりすごい!今回もあっとう間になくなってしまいました。すると、その棒をお坊さんに頼んで地面にバシバシ叩いてもらっています。
牛王杖(大聖棒)について少し調べてみると、お堂の床を叩いたりすることで悪霊を退散させるという意味があるようです。なるほど〜。
ヒザツキ
棒叩きタイムが終わると再び童子さまたちのご登場。一番やること多いのこの子たちだね!がんばれーーー!!
鈴をふりふりする「天狗拍子」と同じ?と思いきや、さっきとは違う膝を曲げる所作があります。
鈴を振る時はお坊さんが「ふってふってーーーーー」って言ったり、動作を指示してその通りに動く童子たちの姿がなんだかとてもほんわかしてて好きだったなぁ。
男面と女面
一番最初に舞うフレイ経では大人の男面をつけていましたが、2回目の「天狗拍手」と3回目の「ヒザツキ」では大人の女面を被っています。わたしはその場にいる時は違う面をつけているとはまったく気づかず、後で調べて知るという・・・。だって、わからなくない???
・・・あれ?よーーーーくみたら、もしかして女面「お歯黒」してる・・・!??(あと、男面にはもみ上げがある?)
お、おもしろーーーい!!!
このことからも古い時代から行われてきた祭りなのだということがわかりますね・・・。ちなみに以前の祭りの映像を見ると、女面の時は色とりどりの紙で作られた飾りを頭に被るようです。やはり雨で完全版ではなかったのか、それとも今年からやめたのかは不明。見たかったな・・・。
ビサラモンポー(毘沙羅門棒)
これ以降はすべて面なしの素顔での舞。一本の大聖棒を手に、お坊さまの「びさーらもんぽー びさーらもんぽー」のリズムに合わせてステップを踏みます。
童子舞には陰陽師等でも知られる足で地を踏みつける「反閇(へんばい)」の所作をはじめ、全体に呪法的色合いの濃い動きが見られるそうです。本日何度目かのトキメキ・・・!!!
鉾突き
お次は鬼副ボーイズの出番!囃し立てるように一斉に法螺貝や鐘の音が鳴り響きます。
鉾を交差させ擦り合わせると、ぐるっとゆっくり半回転。そしてその交差させた鉾の間をお坊さまたちがくぐり抜け、再び鬼副がゆっくりと半回転して元の位置に戻ります。
鬼副ボーイズが色とりどりの紙飾りをずっとくわえているのも面白いと思いました。
翁面
鬼副ボーイズが童子たちに例の翁面を持ってきました!大聖棒の先に翁面をあてて、お坊さまの「なよーい うよーい」の言葉に合わせ、翁面をこくん、こくんと頷くように揺らします。(意味は・・・わからん!)
それが終わると鬼副が再び翁面と大聖棒を受け取ります。
青蓮華・赤蓮華(しょうれんげしゃくれんげ)
まだまだ続くよ童子舞!お次に鬼副が持ってきたのは赤と緑の風車のような飾りもの。どうやら蓮華を表しているようです。この飾りを片手で持ち、お坊さんの言葉に合わせてステップを踏み、最後はその場でぐるーっと回って「なりけりー!」の声に合わせて決めポーズ!!
五大忿怒王(ごだいふんぬおう)
鬼副が蓮華の飾りを受け取り戻ると、今度は童子たちの父親と思われる両副たちが刀を差し出します。
「ごだーいふんぬーおーう ごだーいふんぬーおーう」
お坊さまの言葉に合わせ、ステップを繰り返します。単調ではあるものの、途中で後ろ向きにステップを踏む動きがあるので慣れるまで難しそう!
そして毎度お馴染み両副による童子だっこ!これにて童子舞はすべて終了です。
以上の7つの舞すべての前後では、この両副が童子たちを抱えて決して歩かせることはありません。
今回は雨ですべてお堂内で行われましたが、通常ならこれらすべての舞ごとに両副がお堂内から童子たちを庭へと運び出し、舞を終えたら再びお堂へと運び入れるという姿を見ることができます。
移動の時に地に足をつけさせない理由は、堂内は霊界であって童子は聖なる霊体として扱われていることを示しており、その聖なる霊体の出現を演出しているものと考えられているそうです。しみじみとおもしろいなぁーーー。
この後に行われていたはずの鬼攻めはもちろん今回も人手不足により行われることはありません。お坊さまによる最後のお経が行われ、竹崎観世音寺修正会鬼祭は終了となります。
お疲れ様でございました!!!
大聖棒ラストチャンス
帰ろうとしているおいちゃんにどこに大聖棒を飾るのか聞いたら、縁起物だから玄関に飾ることが多いと言っていました(後日読んだ資料には、床の間に飾って農家では田畑の虫除けにするとも)。
わたしが大聖棒を持っていないことに気づき何度も「あげよか?」と言ってくれたけど、そのままバスや電車に乗ってたら不審者なのでは・・・?それにもらっても場所に困りそう・・・と思って気持ちだけもらってお断りしたんだけど、今更ながらちょっと後悔。今年一年約束されたご利益を取り逃しました・・・。でも、きっとその場にいたことでご利益のおこぼれもらえてるはずーーー!!!次はぜひとも大聖棒の壮絶なる争奪戦に果敢に参加したいと思いますっ。
さて、祭りの様子はYouTubeに色々と転がっていますので、もっと詳しい祭りの様子を見てみたいという方はぜひとも検索してみてください。実際に観に行くのが一番オススメだけどね!
さよなら竹崎島
竹崎観世音寺近くのバス停でバス待ちしてたら、バス停隣に車停めてたおいちゃん(大聖棒のおいちゃんとは別)が駅まで乗せてってあげるという!でもあと数分でバスが来そうだったのでこれまた丁重にお断り。ほんと、世間にはやさしい人が多いね。ありがたい・・・。
バスに乗るとなんと「無料」と言われてびっくり!え?そんなことあるの!??聞き間違いかなぁと思ったら、次々に乗ってくる人たちに無料って言ってて、みんな「え?無料??」って驚いているのも面白かった。正月だから??無料すごいわ!ありがたやー!!今回の旅ではスマホ壊れたり雨降ったりしたけど、なんだかんだで色々と幸せな気持ちになれてもしかしてラッキーなのでは・・・???
あ!佐賀でよく見かける交通安全子ちゃんだ!!!(わたし命名)
鹿島市観光物産センター
あっという間に肥前鹿島駅へと到着。少し時間があったので、駅内にある鹿島市観光物産センターを物色することにします。
地方の練り物はなんでこんなにも美味しく見えるのか・・・(エビマヨカツ買って食べたら美味しかったよ!)。
ご当地感満載のお菓子を見るのも楽しいよね。
鹿島市には有名な祐徳稲荷神社があるのですが、稲荷ようかんなるものが売られていました。
有明海ならではの「わらすぼ」や「むつぼろう」関係の品々も充実!!!
自分へのお土産にムツゴロウ爪楊枝入れを購入。
最後にアイスコーナーを覗いてみると・・・
ご当地感満載なトラキチ!?これは買わずにはおられない・・・!!!
調べてみると、なんと作っているのはあのブラックモンブランと同じ会社だというではありませんか!
早速駅のホームでもぐもぐ。みんな大好きチョコバナナ。美味しくないわけがない。
クジまでついてて最高です。
電車に乗り込み、乗り継ぎしながら自宅に帰り着く頃には真っ暗になっているのでした。年末に突然思いついた旅ではありましたが、とっても実りある旅になったように思います。スマホは壊れたけど!壊れたけど!!(半泣き)行ってよかったです。
最後に
竹崎島という小さな島の中に、お祭りをはじめ火山や蟹、恵比寿等といった魅力がぎゅっとつまっていて、とっても大好きになってしまいました。
そして2日間続けて体験した竹崎観世音寺修正会鬼祭。完全版ではなかったものの、とっっっても楽しくて!!!何の知識もないまま向かったお祭りでしたが、今回ブログを書くにあたって、ずっと気になっていた国東半島の修正鬼会と同じ系統の行事であったことを知り、行きたすぎて息が詰まるほどにブルブルと震えております・・・!!!(色々と共通点がありそうなので実際に見てみたい!)
さらに全国各地で行われる修正会や鬼が出てくるお祭りも気になり出して・・・。
鬼すべ
こちらはたまたまお誘いされて今年の1月に訪れた太宰府天満宮の鬼すべ。鬼すべの前に行われた鷽替え神事もたのしかった!!
今は猛烈に修正会に行きたい・・・。またまた追いかけたいテーマが増えてしまったよ。生きているうちに興味のあるすべての場所に行くことができるのだろうか・・・若干途方に暮れつつ興味が尽きないことは幸せなことだなぁとしみじみと思うのでありました。
■参考文献・サイト
「追儺・修正会結願の鬼行事 その地方的受容と展開―九州地方を中心に―」中村茂子著
【使用カメラ】digital:SONY α7III +NOKTON classic 40mm F1.4、SIGMA 24mm F1.4、SIGMA dp3 quattro、film:CONTAX Aria + Planar 50mm f1.4