自転車の返却まであと1時間半。目的の場所には30分ほどかかります。急いでGO!!!
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レンタサイクルで郊外へ
マップアプリに案内されて自転車を走らせていると街からどんどん離れ、山が近づいてきます。
自転車の横を車が次々に走り抜ける道路を外れて線路を渡ると、郷愁を感じる田園風景が広がっていました。
田んぼに囲まれた一本道の突き当たりを曲がり橋を渡ります。ついに目指している場所の入口に到着です。
目指すは五百羅漢
自転車を止めて近づくと、入口には4つの場所を案内する看板が立っていました。
「程洞コンセイサマ」「五百羅漢」「愛宕神社」「卯子酉様」。
時間があれば全部周りたいところなのですが、時計を見るとすでに16時20分を回っています。レンタサイクルを借りた観光協会まで約10分ほどかかるとすると、わたしに残された時間はあと30分ほどしかない・・・。ひとまず「五百羅漢」に目的を定め、いざ出発!矢印が指し示す細道へと足を踏み入れます。
細道の入口付近には石碑がずらりと並んでいました。その中のひとつに大きく書かれた「山神」の文字が。
昼間に博物館で見た展示には、この「山神碑」について以下のように書かれていました。
「山神碑は山の神に遭遇した場所、山の神の祟を受けた場所に建立されるという。」
・・・・・一体何がここであったのぉーーーーー!??
ぶるぶると震えながら進むとさらにこんな看板が・・・
く、熊ぁぁぁーーーーー!!!!!
わたしはね・・・山の神よりも何よりも熊が、熊が怖いんですよ・・・・・。
こんなこともあろうかと去年の秋田青森旅の時に入手した熊鈴も持ってくるつもりだったのに、急いで荷造りしたものだからスッカリ忘れてしまっていたんだ・・・。
しかしここまで来てズコズコと帰るわけにはゆきませぬ。スマホで音楽を大音量でかけながら薄暗い森の中に足を踏み入れ、恐る恐るギョロギョロと周囲に目を配らせながら前へ前へと進みます・・・。
するとすぐに森を抜けて開けた場所に出ました(ちょっと拍子抜け)。フェンスに囲まれた舗装された道の下を覗くと道路が走っています。この先にどうやら五百羅漢があるらしい。
道を渡り切ると再びあの危険を知らせる黄色い看板が・・・
どうか!熊が出ませんように・・・!!!
ゴツゴツした苔むした岩の間をぬって少し傾斜した山道を登っていきます。(道という道はない)
何かが刻まれている岩がぽつりぽつりと点在していることに気が付きます。
これらは江戸時代の大飢饉により大勢の人たちが亡くなったことを悼み、お寺の和尚さんが岩に刻んだのだそうです。調べてみたら380体もの像があったもよう。わたしが見たものはほんの一部だったのですね。
もっとはっきり刻まれているのもあったのだろうけど、熊が怖すぎてゆっくり見ることができず。ほんの数分の滞在で退散!!!もうね、悲しいくらいぶれっぶれの写真しか撮れてませんでしたよね・・・。嗚呼、わたしに熊と戦える強い精神力と拳があれば・・・。
コンセイサマ(金精様)も拝みたかったけど、熊が怖いし時間もギリギリ。
逃げるように森を飛び出し自転車でダッシュ!なんとか営業時間内に自転車を返却。観光協会のショップで買った冷たくて酸っぱい山ぶどうのジュースを飲んでほっと一息つくのでした。
熊に怯えながら暗い森の中を歩くのはもちろん怖いんだけど、実はどこかワクワクしている自分がいるから不思議。やっぱりわたしはほんの少しのスリルがほしいのだなぁ。命を落とさないくらいのささやかな刺激。
観光客がわらわらいるカッパ淵と伝承館だけでは物足りず、欲求不満のまま1日が終わろうとしていることに焦燥感を覚えていたので、このちょっとしたスリルでほんの少し心が潤ったのでした。
運命の出会い
宿での夕食の時間が近づいていたので、そろそろ帰ろうかと宿に向かって歩いていると、途中で水がないことに気付きます。コンビニやスーパーを検索しても通り道にはないみたい・・・。うーむ、自動販売機はあっただろうか?観光協会のショップで買っておけばよかったなーなんて少し後悔しながら、街中へとUターンして水を求めてふらふらと彷徨うことに・・・。
すると一軒のお店が目に止まります。
扉には『本当にはじめての遠野物語』のポスターが貼られていました。わたしが遠野に行こうと漠然と思い始めた頃にタイムリーに発売され、ネットショップで購入した一冊の本。少し開いている扉から中を覗いてみると、棚にはその本をはじめ、いくつかの冊子や手拭いなどの商品が並べられています。
ふらふらと吸い込まれていくと、中には一人の男性の姿が・・・。
も、ももももももしや・・・
尋ねてみると、やっぱりこの本を作ったご本人さま!まさかこんなところでお会いできるとはーーー!!運命の出会いに静かに興奮するのでした。
『本当にはじめての遠野物語』
昔の言葉で書かれていて実は読むのが難しいらしいオリジナルの『遠野物語』。旅立つ前に福岡の大好きな古本屋さんLOMO BOOKSで『遠野物語』の復刻版を見させてもらったのですが、ちらっと中を見たら確かに難しくてわたしには読めそうにありませんでした。
その『遠野物語』の世界をわかりやすい文章と可愛いビジュアルで紹介した本が『本当にはじめての遠野物語』。この本を読んで『遠野物語』について少しだけ触れてから今回の旅にのぞんだのでした。
著者である富川さんは2016年に遠野に移住してきた方で、まったく民俗学や踊りにも縁がなかったのに現在では民俗学についての本を書き、幕踊り系の鹿踊である「張山しし踊り」の舞手としても活動しているというのだからすごい。人生ってわからないものですねぇ。
さて、今回の岩手旅の目的は鹿踊。そんなわたくしでありますからもちろん興味津々に鹿踊についても話を伺います。昼間に博物館で鹿踊の装束を見てきたことを伝えると、なにやら部屋の奥に置かれていた家紋入りの布の包みをごそごそしだすではありませんか・・・。
はらりと布が落ちて目の前に現れたのは、ななななーんと!鹿頭さまぁぁぁーーーーー!!!
部屋の奥に布にくるまれたものがあるなーって思ってたけど、まさか鹿頭さまが包まれていたとは・・・。ビックリです。
数年前に作ったmy 鹿頭で、それまではレンタル鹿頭だったらしいです。「そろそろ作るか?」と言われて作ることになったんだって。仲間に認めてもらったみたいで嬉しいではないかー!と、なんだかわたしまで勝手に嬉しくなりました笑
重いんだろうなぁーと思っていたら、なんと持たせてくれることにー!!!う、うれしい・・・(昇天)。そしてやっぱりなかなかの重さ。これを頭に乗せて踊るんだもんねー。ほんとすごい。
鹿踊と現代の音楽を組み合わせた新しい試みもされているようで、今週末の8月26日には「遠野巡灯篭木」というイベントも行われるようです。わたしもそもそも数年前にインスタでコムアイとイベントをしている写真や映像を見て富川さんのことを知ったのだよね。
まだ色々と話していたいのに・・・18時30分から宿ごはんだよーーーーー!!
急いでお暇することに。その場に居合わせた東京から来たというご夫婦も一緒に会話して楽しい時間を過ごすことができました。いつか遠野の鹿踊も見にいきたいな!
夕暮れの街並み
最後にスペシャルなご褒美もらった気分!ルンルンで宿へと向かいます・・・が!!
「水ー!水を買いに来たんだったー!!!」
思わぬ出会いに興奮してすっかり忘れていたよ。またUターンするのは辛すぎるので、あきらめて宿へ向かうことに・・・。
ちょうど日が暮れ出した頃で、宿へと向かう途中にある風情ある建物が、夕陽を浴びてより一層美しく輝いていました。
宿への帰り道で自動販売機を発見!心配していた水問題もこれで解決。これで干からびなくてすむー!安心して宿に向かうことができたのでした。
さぁて、宿に着いたらおたのしみの夕ご飯タイムですぞ!!!
【使用カメラ】digital:FUJIFILM X-T3、SIGMA dp3 quattro、iPhone SE2
③台風危機一髪!岩手お盆ひとり旅2023 へとつづく▼▼▼